1.「ROE」プログラムに目覚めさせられた我が国の『赤ちゃんプログラム』

2001年9月8日に開催したメアリー・ゴードン女史の講演会『赤ちゃんが学校へやってくる』(子ども家庭リソースセンター主催)は、子育て支援者やマスコミ関係者の強い関心を呼びました。
 少子化対策の施策を模索中の行政をはじめ民間の諸機関では、『赤ちゃんが主役』のプログラムに、正に“コロンブスの卵“感。「新しいヒント」を得た人たちの心を動かしたと言っても過言ではありません。赤ちゃん(乳児期)の一年間は、人の成長期の中では最も大きな成長と変化を遂げる時代であることに、多くの人たちは、改めて目を開かれたのでした。 
しかしながら、「ROE-Roots of Empathy(共感の根)」は、カナダで開発された個人のパテントのプログラムであること、さらに学校教育の中で全プログラムの実施が条件でした。このような理由から、日本でこれをそのまま普及するのは大変困難でした。

日本経済新聞 2005年3月11日 生活コミュニティ「他者への共感育む」
 
2.厚労省企画『年長児童の赤ちゃん出会い・ふれあい・交流』モデル事業へ

2002年(平成14年)、「厚生労働省・児童家庭局」では、『赤ちゃんプログラム』のモデル事業の実施を全国都道府県・市町村へ呼びかけました。これに応じた5つの都市が短期間の中、それぞれ特色ある企画のもとにモデル事業を実施しました。その結果は予想を超える反響や成果として報告されました。モデル事業開始の際、委託を受けた「子ども家庭リソースセンター」は、サポートスタッフとして臨床心理士4名が各地へ赴き学習会に参加しました。各地に地域性を活かした推進委員会が組織され、モデル事業が展開されました。その実践と参加者の反響は、その後『赤ちゃんプログラム』の発展に大いなる原動力となったといえます。
 
3.平成14年度厚生労働省の呼びかけによるモデル事業の実践と反響

1)各地モデル事業の特色
(1)京都市;5箇所の児童館(社会福祉法人立)が、市から委託を受けて実践した「児童館型」の例です。乳児保育所、保健所、高校(家庭科教員)との連携、また大学生のボランティア起用によるXmasプロジェクトや託児体験、赤ちゃん講座などを通しふれあいの場を提供しました。
(2)高浜市;人口4万人ほどですが、福祉に造詣の深い歴史を持つ市です。幼稚園内に開設の「ひろば」で実施された[ひろば型]事業です。近隣の中学・高校の協力を得て実施。赤ちゃんは母親クラブに依頼して、多数組みの親子と継続的に出会う企画でした。ひろばの中で「ふれあい」中心の事業でしたが、モデル事業のための推進委員会と行政の協力で小回りの効いた地域資源活用の実践になりました。
(3)新潟市;市内3箇所の学童クラブ(学童保育所)で実施した[学童保育型]です。赤ちゃん親子を学童クラブに招き、「共に遊ぶ、手作りおもちゃをつくる、歌のプレゼント、赤ちゃんを抱く」などの体験型交流を行いました。唯一小学校低学年児童が参加したモデル事業でした。
(4)水沢市;教育委員会が参画の実践。従来から市が行っている中高生の居場所「寺子屋活動」の場に、月一回開設する[ちびっ子広場]を併用。推進委員会に高校生がメンバーとして加わり、彼らが企画から広場のふれあい迄を行うユニ-クなタイプの青少年健全育成事業として行われました。
(5)杉並区;6児童館・各館の企画にのせて展開を試みた[協働型]の実践です。児童館事業に加え、保育所、乳児院の赤ちゃん、保健所、中・高校の授業展開など、幅広い実践となりました。離乳食体験、託児や保育の体験、遊びや抱っこの体験、お母さん達からは出産時の体験談、VTRを通した学習まで、地域資源を十分に活用した地域協働型事業とも言える実践です。
2)参加生徒児童、並びに参加保護者の反響の事例から
(1)ふれあい前;生徒達の赤ちゃんイメージ
①は、赤ちゃんとふれあい経験のない児童  ②は、多少ふれあい経験のある児童
①可愛い、プくプくしている、ちっちゃい、すぐ泣く、よく寝る、ミルクを飲む、喋らない、首が据わっていない、おむつをする、・・・・・
② 柔らかい物を食べる、何でも口に入れる、何でも握る、好奇心旺盛、寝顔がかわいい、目が離せない、扱いにくい、親の世話が必要、貴重な存在、体温調節が自分でできない、自分の状態を泣いて知らせる
(2)ふれあい後;生徒達の赤ちゃんイメージの変化
・やっぱり赤ちゃんは可愛い。
・聞いているだけの赤ちゃんと触れるのとでは違うナーと思った。
・言葉が分らなくても心で通じ合うんだと思った。
・それぞれの個性がいっぱいあふれている。
・一ヶ月しか経ってないのに、ものすごく成長していた。
・赤ちゃんは、こんな短期間でも成長するんだと実感した。
・赤ちゃんは、直ぐにハイハイできるもんだと思っていたが、そうではないのに驚いた。
(3)お母さんってすごい
・お母さんのところに行ったら泣き止んだ子を観たとき「やっぱりお母さんが一番なんだなァ」・・・とおもった。お母さんに抱かれている時は、すごく安心した表情だった。
・泣き方の違いで「オムツ」「ごはん」「ねむい」などのサインが分るみたい、私には全部同じにしか聞こえないのに。
・育児の話を聴いて、私もこうだったのかな?お母さんもこれだけ大変だったのかな?と考えた。
・赤ちゃんは可愛いけど、育てるのはすごく大変だと分りました。私のお母さんもすごく苦労したとも思います。そんなお母さんに感謝したいと思いました。
(4)未来像
・大人になって子ども持ったら、大事に育てようと思う。・虐待は許さない。
・今回の参加を機会に、保育士さんになりたいなあ・・と思った。
・小さい子の面倒を見たい!という決意をもった。
(5)保護者の感想      ☆当初はやや心配も有ったのだが・・・
・中高生とお話ができて好かった。  
・男の子がいたのは意外だったが、おとうさんも参加していたのでとても好かった。
・何故虐待をしてしまうのか、高校生には分らないだろう。理想と現実のギャップで私自身は苦労した。予備知識として赤ちゃんを知っていればそれなりの覚悟もあって子育てに臨めると思う。親も良い経験に成った。
・夜泣きをする子を持って感じた事だが、そんな時こどもを叩いたり首を絞める話を聴き我が家は夫が聴いてくれたり、助けてくれるのを有難いと思う。中高生が早くからこうした経験するのは望ましい事だ。
・優しくあやしてくれる姿は、とても嬉しい時間だった。
 
4.『赤ちゃんプログラム』その後の波及

モデル事業の参加地域は勿論、全国的に様々な事業が行われていますが、「子育て・家庭支援策」の一環としてだけでなく、次世代育成のプログラムとして20代の青年期向け「保育サポーター養成講座」などにも組み込まれています。
中高生たち自らが育つ時代に、『育てることを知る』実践としても貴重なプログラムです。

☆赤ちゃんプログラムの一例から
(1)次世代育成のためのプログラムとして、保育所における小学生や中学生の職業体験授業やボランティア活動の一環として、『赤ちゃんとのふれあい交流』が行われている地域が珍しくありません。日常的な活動として定着している地域も多いようです。
(2)子育て家庭支援策の一環として誕生した「子ども家庭支援センター」と学童(保育)クラブの交流(ボランティア)等。
(3)子育て広場への大学生ボランティアの参加と赤ちゃん親子とのふれあい。またその発展として大学生の家庭訪問によるベビーシッター役割体験など。
(4 )中学生の家庭科授業に「赤ちゃん親子の参加」をする体験授業(地域資源活用の授業)。
(5)各地保健センターにおける、乳児(4ヶ月)健診時ボランティアとして高校生が参加。
または高等学校の授業の一環として実施する・・・(体験から得るものの大きさと、責任の重さ体験を実感する)

☆全国の市町村ホームページには、多種多様な『子育て支援プログラム』の紹介記事があります。

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